Photo:谷岡康則 Yasunori Tanioka
「鏡」:"The Mirror " Eternal Existence 和田みつひと
中西進によれば、「うつし」とは、人の死までを含み転移を表している。そして、この転移は、人の死という変易のみならず、「写す」ことにも「映る」ことにも用いられる。つまり転移に含まれる二つの存在は、実体の変化に関係なく移動する。その都度それぞれが「うつし」(現)であるという思考にささえられ、「うつし(せ)み」(現実体験)とはそうしたことばであると指摘している。
永遠の存在(Eternal Existence)は、光と陰の存在のように、うつしうつされ移りゆく。時空を超えて存続ける。「写す」と「映す」は「光と陰」の関係のように、その関係の中に固定した存在はなく、状態を超えて存在が移動し続ける。
見れど飽かずいましし君が黄葉のうつり去れば悲しくもあるか 万葉集 巻三(四五九)
― いつまでも見飽きずいらしたあなたが黄葉のように移ろい去っていったので、何とかなしいことよ。― 中西 進 口訳
絶対の死が意識され、死者と共有する視点に立つとき、死者という「鏡」に照らし出された新しい一人の〈私〉と出会う。そして、私は、この作品を未だ見ぬあなたへ捧げたい。あなたが、あなた自身〈私〉と出会うために。