Photo:谷岡康則 Yasunori Tanioka
「“ on Blue ”」 和田みつひと
府中の商店街「国際通り」にあるVFXstudio LOOP HOLE(デジタル特殊撮影スタジオ)内に設けられた現代美術のギャラリーにて開催した。服飾店を改造したLOOP HOLEのギャラリーのショーウィンドウに青い透明シートを貼り、天井と壁に青い塗料を塗布、青い床材を敷いた。そして、青色と緑色の照明を設置し、奥にある机や椅子・パソコン・映像資料などが置かれた部屋を黄色の照明で照らし出した。表現の場としてのギャラリー空間から日常の空間へ、青紫、青、青緑、緑、黄色へと光と色のグラデーションをつくり出した。
奥の部屋の開口部に呼応した青い透明シートを貼っていないウィンドウの開口部からは、切り取られた日常の光景を垣間見ることになった。また、青色に染まったギャラリー空間から奥の部屋を見るとき、色彩の補色の効果により、黄色に照らし出された空間は赤味が強く見え、黄色はオレンジ色に見えた。奥の部屋に進み光と色を見るとき、より鮮やかに赤味を増して見えた。奥の部屋には赤いフィルターで撮影した写真作品を展示し、黄色からオレンジ色、赤色へと目の中で変化するグラデーションをもつくり出した。
私の作品が意図することは、展覧会に訪れる鑑賞者だけではなく、会場に関わる様々な人が各々の視点で、それぞれが経験する場をつくり出すことだ。展覧会に接する人の経験と、その経験に伴って起こる意識の変化が重要となる。光と色を使い、場所の特性を強調し印象付けることによって私は、観察による実感の伴った経験を喚起させる。それは、生活の中にありながらも見過ごしている「美しさ」を自身の中に問う機会、ただ当たり前に在るわけではない自分自身と「対話」する場を立ち上げることだ。
私の作品は、「対話」によってつくり上げられる作品だ。人と場所、各々の関係により築き上げられる作品だ。今回の展覧会では、他メディアで活動するアーティストとのコラボレーションを試みた。私のつくり出す光と色の作品との三者三様のアプローチによるコラボレーションを試みた。私の作品は、人と場所との関係の中にある作品、それ自体がひとつの出来事としてある作品である。
2009年
■コラボレーション・イベント
会期:1月16日(金)
出演:鈴木悦久(フィードバックノイズ)
会期:1月31日(土)
出演:Junko Okuda(ダンスパフォーマンス)
会期:2月21日(土)
出演:伊東篤宏(サウンド・インスタレーション)
「仕切り、囲まれ、見つめられる」桐山の家 和田みつひと
横浜を拠点に活躍中のアートセンター「BankART1929」が空家の再生を建築ユニット「みかんぐみ」に依頼し、家を構成する建築、インテリア、家具や調度品、ファブリックに多様なアーティストが関わりながら、桐山の家「BankART 妻有」(作品番号201)を完成させていくプロジェクトに参加した。
日常の中に色を差し込み、場所の持つ特徴(場所性)を強調する作品である。BankART妻有の内側と外側を仕切る欄間や窓ガラス、そして障子に赤、青、黄、緑を配置した。刻々と変化する棚田や木々の緑、青い空をより鮮やかに見せた。ガラスを透過する透明な色の光、障子紙を透過する不透明な色の光によって、冬は暗く雪に閉ざされ、夏は明るく光に満ちた越後の山深い桐山の古民家の構造をも浮かび上がらせます。古い日本の風景に囲まれた場所で、私たち自身を見つめ、遠い記憶や経験を喚起させる作品である。
2009年